e-mail Inquiry Top
Index Profile News Products Library

Library

04/2002 NEDO 平成13年度エネルギー・環境国際共同研究提案公募事業[成果概要]
ハイブリッド型リラクタンス磁石を用いた高トルクモータの開発について
[目的・概要]
 本プロジェクトは、ハイブリッド型可変リラクタンス磁石を用いてモータ駆動時の電流効率が改善できる高効率の高トルク HB(Hybrid)モータの実用化と製品の基本仕様を確立するため、制御回路の設計および製品開発のための基本的な知見を得ることを目的に、その実用化に必要な要素技術である以下の開発を行った。
 1.ハイブリッド型可変リラクタンス磁石の最適形状化のための磁場測定および解析技術
 2.HB モータの試作
 3.HB モータを効率的に駆動させるための制御回路技術
 4.HB モータの効率を解析するための波形処理技術
 5.HB モータの基本仕様の確立
 弊社は HB モータの試作および基本仕様の確立を中心にプロジェクト全体の運営を行った。東海大学は再委託業務として上記の要素技術のうち1、3、4について、シュタインバイス財団は1の要素を中心に共同研究した。

[実施内容]
1.ハイブリッド型可変リラクタンス磁石の最適形状化のための磁場測定および解析技術
 ハイブリッド型可変リラクタンス磁石の形状の最適化を目的として F.W. Bell 社製磁場測定装置6010型により磁場分布を測定した。
 測定の結果、ハイブリッド型可変リラクタンス磁石の直上(作用面)に可動部材(軟磁性体)がある場合には永久磁石の側面(非作用面)での磁束の漏れが減少し、エアギャップ(作用面と可動部材の空隙)の磁束密度が大きく増加することが確認された。また、ハイブリッド型可変リラクタンス磁石をモータに応用した場合の磁場分布についても測定し、回転に対しても同様に有利に働くことを確認した。東海大学によるこの測定結果を用いて、国際共同研究先であるシュタインバイス財団を中心に有限要素法(FEM)による磁場解析を行った。その結果、永久磁石部分についての最適な寸法を確認したことに加え、HB モータを設計する上で、ロータおよびステータの作用面の仕様を決定するための重要な知見が得られた。アウターロータ型(後述)についても試作と同じサイズで静的な磁場解析を行い HB モータの解析技術の開発を図った。


2.HB モータの試作
 ハイブリッド可変リラクタンス磁石を用いた HB モータは、 SR モータ(スイッチドリラクタンスモータ)に近い動作原理のモータである。近年、SR モータは高トルクモータとして欧米を中心に研究され大きな注目を浴びているが、課題としては振動や騒音に影響を及ぼすリップルがある。ハイブリッド型可変リラクタンス磁石を用いた HB モータは、このリップルを改善できる画期的な亜種形状モータであるといえる。本プロジェクトの HB モータは DC 電源によって駆動するブラシレスモータとして次の2種類について試作を実施した。アウターロータ型では低回転・高トルク、インナーロータ型では高回転を目的として基本設計し、外形寸法はφ100mmで統一した。共通した特性として、従来のモータ構造では達成できなかった off-time での突入電流を低減できることが明らかになった。また、アウターロータ型では低回転において高トルクが持続することを確認した。効率については60%前後を目標としたが、部材の選定など構造上に課題を残したことで今回は共に及ばなかった。
 HB モータの駆動装置の試作については、東海大学による制御回路技術、波形処理技術(後述)の開発と併行してアウターロータ型、インナーロータ型それぞれについても併せて実施した。励磁タイミングの検知には、測定を容易に行うため光センサーを HB モータ試作機の外部に取り付け使用した。これにより、各コイル間での on-off の同期方法を確認した。


3.HB モータを効率的に駆動させるための制御回路技術
 効率的な駆動回路設計のためには、試作機の基本特性の把握が重要である。基本特性として静特性、動特性の測定、制御回路の設計、実験を設定し、これらをアウターロータ型の HB モータについて実施した。また、制御回路については供試機の基本的な特性ならびに必要な定数を得るために従来から用いられている制御回路を設計、製作した。


4.HB モータの効率を解析するための波形処理技術
 効率の解析には動トルクと回転数の関係を測定し、その効率の計算と常時最大効率時で運転できるような制御回路の設計が必要である。そのために、動トルク特性の測定、従来の制御回路と最適化された制御回路、試作モータの効率計算、最大効率時で回転する制御回路の設計を実施した。
 また、HB モータのコイルに流れる駆動電流波形とコイルの両端の電圧波形の解析結果から、ハイブリッド型可変リラクタンス磁石の優位性を確認した。

5.HB モータの基本仕様の確立
 プロジェクト全体を通じて基本仕様を確立するための多くの知見を得た。試作については効率が目標に及ばず今後に課題を残した結果となり、実用化のための仕様の最終決定は以後の改良を待たなければならないが、現在までにハイブリッド型可変リラクタンス磁石を用いた HB モータの特性が明確になった。ハイブリッド型可変リラクタンス磁石は永久磁石と軟磁性材料を組み合わせて両磁性材料の特性を活用して強力な電磁石を構成する。この構成は軟磁性材料に直流重畳されているので、軟磁性材料を磁化するための励磁電流を削減することができる。この画期的な磁気回路によって従来のモータ構造では達成できなかった off-time での突入電流を低減するなど、省消費電力と高効率化に優位性を発揮できる。また、従来の永久磁石を組み込んだモータは通常時の磁界の漏れが原因となるディテントトルクの発生が問題となるが、 HB モータではこの漏れはほとんど発生しないために低コギングが可能となり、高精度のモータとしての仕様も考えられる。
 ハイブリッド型可変リラクタンス磁石に用いた希土類の磁石は使用量としては少ないため実用化の際にコスト面への影響は小さいと考えられるが、さほどトルクを必要としない高回転用のモータであればより安価なフェライト磁石でも可能である。製品のニーズに応じて磁石やコイルなどの仕様は調整が可能でサイズや形状も広範に対応できることから、極めて汎用性が高いことが伺える。

[総合評価]
 近年、モータは小型・薄型化のために駆動周波数の高周波化を行ってきた。それとともに省消費電力のため低鉄損の素材開発とエネルギー積の大きな磁石の開発が行われてきた。この従来型のモータは技術的にかなり成熟しているため、飛躍的な省消費電力および高効率化は困難である。
 ハイブリッド型可変リラクタンス磁石を用いた HB モータは市場には少ない低周波に強い高トルクモータである。本プロジェクトではこの HB モータの基本仕様の確立のための要素技術の開発を実施した。この HB モータに近いものにコンピュータのハードディスクドライブなどに使用されているボイスコイルモータがある。これは永久磁石に対して逆方向にコイルで磁束を発生させて磁気的空隙部(作用面)の漏れ磁束を制御するものである。これに対して、HB モータの優位性は永久磁石とコイルで発生する磁束は同方向であり、磁気的空隙部に両材料の磁束密度が加算された高磁束密度の漏れ磁界を発生させることができる点にある。