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03/2000 ハイブリッド型可変リラクタンス磁石の原理的考察

 ハイブリッド型可変リラクタンス磁石の心臓部である永久磁石と電磁石を組み合わせた閉磁路の部材をここではベーシックファクターと呼ぶことにします。
 ベーシックファクターは永久磁石(a)と電磁石(b)より構成されています。永久磁石(a)はネオジム磁石(硬磁性体)の着磁方向の両側を純鉄(軟磁性体)で挟んだものです。電磁石(b)はコの字の軟磁性体(純鉄)のコア(ヨーク)に銅線のコイル(1個)を巻いたものです。

 ここで永久磁石(a)と電磁石(b)の接合面であるpとqに着目します。
 [1] 電磁石(b)に通電していない(off)とき
 永久磁石(a)の磁力線は、ベーシックファクターの閉磁路を回るだけで空気中への磁束の漏れはほとんどありません。したがってpとqの接合面は強い吸着をしています。この際のpとqでの吸着力は、永久磁石(a)だけによるものです。
 [2] 電磁石(b)に永久磁石(a)の磁束数より多量の磁束数を発生させる電流を同極を対向させて通電したとき
 永久磁石(a)の磁力線は、電磁石(b)の磁力線に閉磁路からpとqの接合面より上に押し戻されて永久磁石の飽和状態を超えると空気中に放出されます。この際、電磁石(b)の磁束数が充分に多量であれば、空気中に放出される磁力線は永久磁石(a)と電磁石(b)の合成されたものとなります。したがってこのときもpとqの接合面は強い吸着をしています。このときのpとqの面の吸着力は、電磁石(b)だけによるものです。
 [3] 電磁石(b)に永久磁石(a)の磁束数と同量の磁束数を発生させる電流を同極を対向させて通電し、かつベーシックファクター自体の残留磁束密度の飽和状態よりも余裕があるとき
 pとqの接合面は吸引も反発もしない無力化状態となります。これは永久磁石(a)の磁力線も電磁石(b)の磁力線もpとqの面を境にして、互いに通いあわないことを意味します。なお、ベーシックファクター自体の残留磁束密度の飽和状態を超える永久磁石(a)と電磁石(b)の磁束数が同量かつ多量であれば接合面pとqは反発力を持ち、各々の磁力線は空気中に漏れ磁束として放出されます。

 [4] 上記[3]の状態において、ベーシックファクターの作用面を(x)とし、(x)に近接する可動部材(y)を想定します。可動部材(y)は純鉄(軟磁性体)からなります。[3]の状態で電磁石(b)に投入する電流値をαとします。(p,qの接合面が無力化しているポイントでの値)

 [4]の状態において、ベーシックファクターと可動部材(y)とのエアギャップを縮めていくにしたがいαの値は小さくなっていきます。これは永久磁石(a)の磁力線がp,qの面を超えてベーシックファクター内で閉磁路を構成することはなく、反対に可動部材(y)に対してエアギャップを介して磁路を構成し作用面(x)において吸引力を発生させていることを意味します。このとき、電磁石(b)に投入するαはp,qの面において永久磁石(a)の磁力線を遮断するに足る量ですみますので、永久磁石(a)の磁力線が可動部材(y)と磁路を構成しやすくなればなるほど、いいかえれば作用面(x)の吸引力が増せば増すほどαの値は小さくなります。なお、作用面(x)の吸引力の限界は、おのずと永久磁石(a)の性能を限界とします。しかし、[2]の状態のように電磁石(b)に多量の電流を投入すれば、作用面(x)の吸引力は、永久磁石(a)の磁力線と電磁石(b)の磁力線の合成となり強力にすることは可能ですが、反面、エネルギー効率は下がる結果となります。
 [4]の状態において、作用面(x)の吸引力を増しかつαの値を小さくするための条件は、次の3つが考えられます。
 1.作用面(x)のエアギャップを小さくする。
 2.永久磁石(a)のヨーク部分と可動部材(y)の軟磁性体の部分を電磁石(b)のコア(ヨーク)の部分よりも飽和磁束密度のよい素材とする。
 3.ベーシックファクター内の閉磁路の距離(L1)に対して永久磁石(a)とエアギャップを介して可動部材(y)と構成する磁路の距離(L2)を短くする。なお、作用面(x)の吸引力を増すには当然ネオジム磁石そのものの性能(Br,BH)をよくすることはいうまでもありません。近年、ネオジムにかわる素材(超電導磁石など)も開発されているようです。
 さて、永久磁石そのものの着磁方向の距離(巾)をL、永久磁石(a)の長さをXLとし、断面積をZとします。L,XLはZと Br,BH 曲線グラフとパーミナンス係数から適する値を算出できます。これにより、永久磁石(a)と可動部材(y)の最適の寸法が出ます。この永久磁石(a)と適合する電磁石(b)を[1]〜[4]の状態を考慮して設計すればよいこととなります。

 [結 論]
 A.電磁石(b)と可動部材(y)の組み合わせ
 B.ベーシックファクターと可動部材(y)の組み合わせ
 AとBを比較するために、エアギャップ、素材、磁路の距離、断面積、体積、コイルの太さ、タン数などを同じ条件にします。AとBの作用面における吸引力が同じときの投入電力量(W)を比較すると、Bの方がAより1/3〜1/4以下ですみます。結論として、永久磁石のエネルギー(保磁力)を力学的動力として十分に利用していることの証明となります。